筆者はアロマンティック・アセクシャルを自認しています。自認に至るまでは、色々ありました。
今回書いてみようと思うのは、アロマンティック・アセクシャルとはどんな人?ということです。
特に「アセクシャル」の部分に焦点を当ててみます。
自認した後は、筆者も自身の指向がどんなものか気になり色々調べたものです。


当事者である筆者だからこそお伝えできる「アセクシャルとは何か」。
こんな悩みを持っている方、お知り合いがアセクシャルかもしれない方に対して、
「他者に対して性的関心を抱かない、アセクシャル」という「性的指向」について、
筆者が悩んだことを含めながら、意味など説明します。
アセクシャルとアロマンティックの違い
筆者は自身のことをアロマンティック・アセクシャル(AroAce)だと自認しています。
AroAceとは「他者に対して恋愛感情を抱かず、他者に対して性的に惹かれない」こんな恋愛的指向と性的指向を持った人を指します。
大枠はこの通りですが・・・


性的に惹かれないってどういう意味?性的指向ってどういうこと?


アセクシャルは、人を好きにならない/なれない人のことではなかったの?
このように、疑問に思われる方もいると思います。筆者も最初のうちは、明確にわかっていませんでした。
特に2つ目の質問・疑問については、当事者や興味を持って調べた方ではないと「何が違うの?」「同じで良くない?」と思ってしまうかもしれません。
- アセクシャル=誰も好きになったことがない人・恋愛したことがない人
- アセクシャル=アロマンティック・アセクシャル
このような情報にたどり着いてしまう理由は、日本でアセクシャルと言うと「アロマンティック・アセクシャル」を指す風潮があるからです。
まだこの言い方は残っていると伺えますが、筆者も実は自認当初は「アセクシャル=アロマンティック・アセクシャル」として捉えていた時期がありました。
しかし、まず言えるのは「正しい意味」で言えば「アセクシャル=誰も好きになったことがない人」ではありません。


アセクシャル≠アロマンティックです。全く持って異なる指向です。
さてこの記事では「アセクシャル」の意味を整理していくことで、アセクシャルについて知り、悩みを抱えている方の情報整理につながればと思っております。
アロマンティックについて、同じように説明している記事もあります。
アロマンティックについて知りたい方はこちらもご覧ください。
性的指向とは?


最初に、AroAceとは「他者に対して恋愛感情を抱かず、他者に対して性的に惹かれない」こんな「恋愛的指向」と「性的指向」を持った人を指すと言いました。
- 「アロマンティック」は「他者に対して恋愛感情を抱かない、恋愛的指向」
- 「アセクシャル」は「他者に対して性的に惹かれない、性的指向」
ここで1つ分かったことは「アセクシャル」とは「他者に対して性的に惹かれない”性的指向”を持った人」であるということです。
「他者に対して、性的に惹かれない性的指向を持った人」なのは、わかりました。
誰かに性的に惹かれないという言葉のイメージも、なんとなく抱けると思います。


でも、性的指向って何?


性的に惹かれない・性的な関心がない、ありえるの?
性的指向の意味
「性的指向」、初めて聞いた単語だとおっしゃる方もいるでしょう。
では、「性的指向とは何か?」と言いますと・・・


性的指向とは「あなたが性的に惹かれる性別」を指します。
- 「女性」が「男性」に対して性的関心を抱く = 「異性愛」という性的指向
- 「女性」が「女性」に対して性的関心を抱く = 「同性愛」という性的指向
これら以外にも「性的指向」は存在しますが、この2つがわかりやすいかと思います。
「どの性(性別)に対して、あなたは性的な関心を抱きますか?」
「異性に対して性的な関心を抱きますか?」「同性に対して性的な関心を抱きますか?」と言ったら、よりわかりやすいですね。
これが「性的指向」です。
性的指向とは何か、ぼんやりとでも掴めましたでしょうか?
性別≠生物学的な性別
「性別」と書いてはいますが「男性」と「女性」だけが性別ではありません。(混乱させそうですが・・・)
筆者は詳しくありませんが「男性でも女性でもないと自認している性」なども存在し、もはや性別は「男性or女性、この世に2種類」ではなくなりました。


更に混乱させるようで申し訳ないのですが、もう1つ言わなければならない事があります。
ここで筆者が言っている「性別」とは「生物学的な性別」では「ない」ということです。


性的指向の意味が「あたなが性的に惹かれる性別」なのは良いけど「性別」と言っても「生物学的な性別」とは違うって、一体何が違うの?


「生物学的な性別」以外にどんな性別があるの?
意味不明で、疑問がわいてくるかもしれません。しかしお話した通り、ここで指している「性別」とは「生物学的な性別」ではないのです。


「性自認=こころの性」という言葉、ご存知ですか?
性自認=心の性とは?


筆者は女性として生まれており、生物学的な性別は女性で、性自認=こころの性も女性です。
自分が女性であることに、1度も違和感を覚えたことはありません。
また、女性として生きることに息苦しさはありません。女性として扱われることにも、抵抗はありません。


女性として生まれて、自身のことを女性だと思っているって、当たり前ではないの?
結局のところ、「性自認って生物学性とイコールになるのではないの?」とおっしゃる方もいるでしょう。
でも「生物学的には男性」として生まれたが「こころは女性」として生まれた方のこと、聞いたことはありませんか?
お知り合いに当事者がいるとは、あまりないかもしれませんが、もはや聞きなじみのある存在かと思います。


「性自認」とは何か?どのような意味なのか?
- 性自認とは、自身の「性についての認識」つまり「こころの性別」。
- 自分が認識している性別を意味しており、生物学的な性別を指しているわけではない。
テレビやネットでも「こころの性」といった表現を、目にしたり耳にしたことはないでしょうか?
生物学的な性別はさておき、自身は男性であると認識しているのか、女性だと自身を思っているのか、
それとも男性でも女性でもないと考えているのか、自己の性の認識、これが性自認にあたります。
- 「生物学的には女性」として生まれてきていても、その方が「自身を男性であると認識」されていたら、彼の性自認(=こころの性)は「男性」です。
- 筆者は「自身の体は女性」であり「自身の心も女性」であると「認識」しています。つまり、筆者の「性自認」は「女性」です。
性的指向と性自認


馴染みのない方には、もはや何のこっちゃ状態かと思いますので、簡単にまとめます。


「性的指向」とは?
- どの性(別)に対して、性的に惹かれるのか、指しています。
- 「あなたはどの性(別)の方に、性的に惹かれますか?」と言ったらわかりやすいですね。


「性自認」とは?
- 自分はどの性(別)だと認識しているか、「こころの性」指しています。
- 「あなたは自身を男性だと認識していますか?女性だと思っていますか?どれにも該当しないと思っていますか?」と言ったらかわかりやすいですね。


「性別(性)」とは?
- 性別≠生物学的な性別
- 性別=性自認=こころの性
生物学的な性別とこころの性が一致している方は「性別≠生物学的な性別」と言われたら、それが普通では?と思うかもしれません。
しかし、性的指向など指向を語る時には、大事な考え方です。
例えば、生物学的な性別は男性だったとしても、女性であると自身を認識していたら「自分は女だと思っていたら」、性別は「女性」です。
- この方の性的に惹かれる対象が「男性」だったら、性的指向は「異性に対して性的に惹かれる、異性愛」
- この方の性的に惹かれる対象が「女性」だったら、性的指向は「同性に対して性的に惹かれる、同性愛」
生物学上「男性」だとしても、心の性=性自認が「女性」で、性的な関心を抱く性別が「男性」なら、同性愛ではなく「異性愛」。
自分を女性だと思っていて、異性である男性に性的に惹かれるのに、身体の性別が男性なら同性愛と言われる、というのは当事者からすると納得できないことと察します。


体は男性として生を受けたけど、こころは女性として生まれた。そして私は女性に性的な関心を抱く。
2つめの状態の方は、表面上は「異性愛」に見えますが・・・
この方の「性自認」は「女性」で「性的指向」は、同性である女性に性的に惹かれる「同性愛」になり得るのかと思います。
言葉を整理できたところで本題です。
性的指向「アセクシャル」とは?


関心を抱く人もいれば、抱かない人もいる。字面としては、どなたも「そうよね」と言うと思います。
- 他者に対して性的な関心を抱く人もいれば、性的な関心そのものを抱かない人もいます。
- 他者に対して、性的な関心を抱く人 (=世の中の大多数の方)を「セクシャル」と呼びます。
- 他者に対して、性的な関心を抱かない人を「アセクシャル」と呼びます。


筆者は、他者に対して性的な関心を抱かない、アセクシャルです。


日本語では無性愛と言ったりもします。日本語の方が字面で想像しやすいかもしれませんね。
アセクシャルという性的指向は、無性愛という言葉通り「誰にも性的に惹かれない」立場にいる人を言います。
性的な関心がない、と言ったら「トラウマ」や「つらい経験」があったの?と言われることもありそうです。
筆者について言えば、つらいことも、トラウマもない、と認識しています。
ただただ、他者に対して性的な関心を抱かない・抱けないのです。


筆者は先天的なアセクシャルなのだろう、思っています。
本当に誰にも性的に惹かれたことがない
さて筆者、今まで男性とお付き合いする機会もあったのですが、全ての男性に対して、一様に性的に惹かれたことはありません。


せっかくお付き合いくださったのに、酷い言い方なのは承知しています。


酷いことを言っているな、酷いという自覚くらいはあるのです。
しかし「誰に対しても、性的な関心も興味も魅力も一切覚えない、覚えたことがない、そしてこれからもないのであろう」これが筆者にとって今のところ変わらない事実です。
誰にも性的に惹かれたことがないの?と問いかけられたら、筆者の場合は「はいそうです」と回答します。


語るための材料が自分の経験のため、先天的なアセクシャルの話を書いていますが・・・


本当に惹かれたことがないのか?一度でも惹かれたらアセクシャルではないのでは?と議論するのは些か危険です。
後天的なアセクシャルも十二分にありえます。
なぜなら、過去に性的に惹かれた経験があったとしても、現在進行形で誰にも性的に惹かれない場合、惹かれないようになった。
悩んでいる本人が自分は「アセクシャル」だと思ったら、その方はアセクシャルです。
現在の状態を指す言葉として「アセクシャル」が1番居心地が良い、と本人が思ったらそれで良いのです。


自分がどの指向を持っているか、それは自分で決めること。
もちろん、一生アセクシャルであり続ける必要はありません。
誰かに、そんな関心を抱いたら、それはそれで全く問題ないことです。


アロマンティックの記事でも書きましたが、アセクシャルが「直った/治った」とは言ってほしくないかな・・・と当事者として思うところです。
「今ちょっとアセクシャル気味」のような言葉を目にしたら、当事者としては非常に複雑ではあります。
性的に惹かれるとは、どういう状態なのか
性的に惹かれるという状態がどのような状態、感情、気持ちなのか、想像が難しいです。


性的に惹かれている状態とは?どんな状態を指すのでしょうか・・・
身体的な触れ合いを望む状態なのか?手に触れたい?髪に触れたい?
もしくはその相手との子供が欲しい?単純に突発的な欲を相手へ向けることで満たしたい?
もしそうであるなら、やはり筆者の中には存在しない感情/想いです。
嘘のように聞こえるかもしれませんが、本当に一切思いません。
- お付き合した男性全員に対して、触れ合いたくないと思ったことはあれど、触れ合いたいと思ったことは一度もありません。
- 拒んだら付き合っているのに変な感じになるし、せっかく付き合ってくれている男性へ悪いと思い、何回かに1回は仕方なしに、としてきましたが、できれば指一本触らないでほしい。
- そのような欲のこもった視線を筆者に一寸たりとも向けないでほしい。
この文章だけ読んだら、なんと男性に対して失礼な人であることか。
しかし、筆者の場合、人生で1度も誰かに対して性的な関心を抱いたことはないのです。
ちなみに筆者は、性的に惹かれる・惹かれない関係なく、パートナーを想定するのであれば、
異性、つまり男性が自分にとっては自然な状態かなと感じます。


女性だから男性を好きになるのが普通で、自分もそのはずだと思っていた時期が長かったせいかもしれません。
筆者の自認前/自認後の性的指向
これだけ今まで性的に惹かれたことはないと言っておいて変なことですが、
筆者の性的指向はアセクシャル自認前と自認後ではこんな感じに変化しています。
- 男女、どのセクシャリティー問わず性的に惹かれたことは1度もない。
- しかし、惹かれるのであれば、異性である男性であるはずだ。これから惹かれる相手が現れるはずだ。
- 自身が異性愛者であると認識して過ごしていた。
- 男女、どのセクシャリティー問わず性的に惹かれたことはこれまで1度もないし、現状もそうである。
- これからも、誰かに性的に惹かれることはないであろう、と感じている。
アセクシャル自認前は、誰にも性的に惹かれたことがなくても、自分の対象が女性とはどうしても思えませんでした。
体と心の性が一致しており、世の中の大多数は異性とお付き合いされる方なので、惹かれる対象は男性であると認識していたためかとも思います。
自分がアセクシャルとは知らずに異性愛者として、彼氏を探したりした若かりしき頃の筆者。
自分には無理なことをしようとしていた筆者。ストレス抱えるわ、と思う現在の筆者です。
まとめ


冒頭の方に「正しい意味」で言えば「アセクシャル=誰も好きになったことがない人」ではない、と書きました。
お読みいただいて、なぜ違うのかおわかり頂けたかと思います。
なぜなら「アセクシャル」とは「他者に対して、性的に惹かれない性的指向を持った人」を指すからです。
- 性的な関心を抱く人もいれば、人数は少ないが「性的な関心を抱かない・抱けない人も存在する」
- 「他者に対して、性的な関心を抱かない性的指向」を「アセクシャル」と呼ぶ。
- 1人で悩んでいる方。1人ではありません。同じ立場の人は、筆者を含め、確実にいます。
筆者が若さであふれていた頃は、アセクシャルという言葉も世の中にはあまり出回っておらず、
探してみても、お目にかかることはできませんでした。
アセクシャルという言葉と出会い、アセクシャルと自認できるまで、自身を異性愛者として自認していた筆者。
この認識と自身のこころのズレが、自分が何者か説明できない・理解できない・理解してもらえない苦しさを巻き起こしていました。
アセクシャルという「誰にも性的に惹かれない」性的指向は、性的な関心を他者へ抱ける方にとっては理解のし難い指向です。


あなたがどの性別(もしくはセクシャリティー)に対しても「性的な関心を抱いたことがなかったら」アセクシャルの可能性があります。
お悩みの方ご本人が若ければ若いほど、もう少し様子を見た方が良いかな?とはおばちゃんは思います。
過去、誰かに性的に惹かれた経験があったとしても、現在誰にも惹かれない・惹かれなくなった、という状態も、アセクシャルの可能性があります。
そして、いつか・いつでも誰かに対して、そんな関心を抱いても良いのです。
アセクシャルであるということは、あくまで自身の現在の状況を表すのであって、続いていく人生の中で性的なを抱いてはいけない、なんてありません。


大人になっても性的に惹かれたことがない状態が続いていたら、過去惹かれた経験があったが現在はその状態ではない場合は、アセクシャルなのかもしれません。
筆者も自認した当初は誰かに「あなたはアセクシャルだ」と言ってほしい気持ちがあったのですが、結局は自分でアセクシャルだと自認しなければなりません。
判断するのは自分です。もし、あなたが「自分はアセクシャルだと思っている」なら、アセクシャルと言って良いのです。
セクシャリティーは揺れ動くものですので、アセクシャルだと思っていたけど、今は違うでも良いのです。


アセクシャルとは「他者に対して、性的に惹かれない性的指向を持っている人」を指します。
正確な意味はこの通りです。
筆者は、多くの方が抱く「誰かに対して性的に惹かれる」という感情を抱かないし、抱けません。
恐らく世の中の大多数の方が疑問も覚えず、他者に対して性的な関心を抱けると思います。
関心の向かう先は同性なのか異性なのか、はたまた別の性なのかは人それぞれ。
どうしても埋もれがちな「誰にも性的に惹かれない」という立場。
でも、そんな立場にいる人は筆者のように、埋もれながらも存在しています。
他者に対して性的に惹かれない。性的な気持ちが他者へ抱かない性的指向。
アセクシャルとは何か?どんな人なのか?記事を読んで少しでもお分かりいただけたら幸いです。
完全な理解は難しくとも、そんな人もいるんだと存在を許容していただけたら助かります。
理解してくれと声高に言うのも個人的には好みではありませんが、ただ、知識としてこんな人がいると知っていただけたら嬉しく思います。
また、この記事が「自分はアセクシャルかもしれない」「アセクシャルって名乗って良いのだろうか?」と悩んでいる方の情報になれば幸いです。